大岡昇平
かなり前に一度読んでいるが、再読。 大岡作品、特に「野火」との共通点の多さに驚く。五味川によれば、この作品は「ドキュメント」らしいが、これは大陸における「野火」であると言ってよいと思う。 例えば、敵(この場合ソ連兵)は、具体的な存在としては…
再読。学習研究社大岡昇平集。 最後、疎水に沿って歩く久子の背景(ゲームや漫画でいうところの純粋に視覚的なもの)が大岡らしく美しい。この本の最初の丸谷才一による解説に、大岡の水へのこだわりと、「オフィーリア」のイメージの指摘あり。
大岡昇平による13の「裁判物語」(裏表紙より)。一日で読んだ。 「事件」もそうだったが、確かにこれは推理小説ではなく「裁判物語」と呼んだほうがよさそうである。想定された読者層のせいか、大岡的調査はそれほど徹底していない。彼の好きな、箴言的な…
一年以上にわたる旅の最中、中年大岡昇平はずいぶん疲れていたらしい。観察、分析はいまいち冴えない。しかし、対象への距離や批判精神、それらから来る健全なシニカルさはなんとか保たれている。 いい文章は、やはり帰国後、少し時間を置いてから書かれたも…
角川文庫、河上徹太郎の編んだほうを買った。大岡の方を買ったつもりがどうも間違えたらしい。しかし大岡の中也に関する文章はまた別に買うつもりなので、結果的に正解だったともいえる。 中原の詩。そこから受ける感じは、決して未知のものではない。この感…